WindSynth覚え書き(半袖

およそ世界で一番技術が十分でなく、演奏の出来が悪いさまを。

ウィンドシンセと外部音源 その2

まず、厳しい現実と高い壁があなたの前に立ち塞がります。
ウィンドシンセには外部音源を利用しやすいものと、利用しにくいものがあります。

このページでは「外部音源をコントロールしやすいウィンドシンセ」をメインにしています。なぜか。
なるべくめんどくさいことをせずに楽しくなりたいからです。
外部音源を利用しにくいウィンドシンセは、いろいろ買い足したり複雑な設定をしたり……。
それらをわかりやすく説明する術をわたくしが持ち合わせていないことも理由の一つです。ごめんなさい。

さて、2024/04現在、店頭で注文をしたり通販でポチッたりして気軽に手に入ると思われる主要なウィンドシンセにはどんなものがあるのか、見ていきましょう。

AKAI EWIシリーズ
Berglund Instruments NuRAD
Berglund Instruments NuEVI
Teefonics LLC MWiC
ROLAND Aerophoneシリーズ
YAMAHA YDSシリーズ
ARTinoise ルナティカ
Robkoo R1
TAHORNG エレフエシリーズ
TAHORNG エレサ

これら10種類のウィンドシンセのうち、外部音源を利用しやすいウィンドシンセは以下の5機種です。

◎ Berglund Instruments NuRAD
◎ Berglund Instruments NuEVI
◎ Teefonics LLC MWiC
この3機種は本体に音源を内蔵せず、外部音源の利用が前提となって開発されています。
演奏性を重視し、かゆいところに手が届くプレイヤーフレンドリーな設計。

くわしいかたならNuRADやNuEVIはよくご存知でしょう。ウィンドシンセの歴史における源流の一つから発展し現在に至る有名な楽器です。ハンドメイドのため高価ではありますが、これさえあれば! と思わせる傑作の一つです。

そしてTeefonics LLCのMWiCは、2024年に満を持して発売された国産ウィンドシンセです。Lyriconを祖にしたウィンドシンセYAMAHAのWXシリーズをはじめ多数存在しましたが、MWiCはその頂点に立つ珠玉の逸品。こちらもハンドメイドであり、生産数に限りがあるため2024年11月現在受注を中止しています。

AKAI EWIシリーズ
ROLAND Aerophoneシリーズ
こちらの2機種、出力されているCC  http:// https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B8が制限された端末もあるため注意が必要です(CC  http:// https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%B8についてはリンク先をご覧ください)。

EWIはEWI5000以外はそれなりに苦労するんじゃないかしら。5000がいいですよ。
繰り返します。EWI5000をお選びください。

Aerophoneは、AE-20とAE-30がいいのですが……これ、そもそも内蔵音源(Zen-Core)がものすごく優秀な上、スマホMac、PCで作った音色を本体に流し込めるので、わざわざ他社の音源を使わなくともいいんじゃないかな、と。音色以外にもたくさんの機能が満載で、まるで「全部盛り」を目指しているかのような制作者さんの強い意志とパワーを感じます。どうしてもZenCpre以外を鳴らしたい、Zen-Coreは自分に向いていないと思うのであれば、Aerophoneを選ばなくても……そんな単純な理由じゃないですよね。失礼しました。

さてさて、まだ本体を持ってないんだよというあなた。
もしも、あなたがわたしの大切な友人であれば次の機種をおすすめします。

サックスなどのシングルリード経験者、あるいはまったくの未経験者なら
・EWI5000
・NuRAD
・MWiC

トランペットなど3バルブ経験者なら
・NuEVI

これ以外は忘れてください(2024/04現在)。

え? 高い?
でしたらAerophoneのAE-30かAE-20を。

これ以外は忘れてください(2024/04現在)。

「え? あんた一番再最初に「財布にやさしい」て書いてたよね?」
はい。書きました。
「EWI5000? NuRAD? 高くない?」
はい。高いです。
「ざけんなおらぁ(机ドン)!!!」

でもね、外部音源を比較的簡単に、教わりやすく&教えやすく、短時間で楽しくなれるものは限られてるんです。
軽自動車で鈴鹿のコースを走るのはあくまで玄人のシャレであって本気じゃない。でしょ?

良い悪いじゃない。
動くか動かないかの話です。

ということで、以下の記事ではEWIとNuRAD(ときどきMWiC)そして音源についてお話をしていきたいと思います。

ちょっと休憩しましょう。

ウィンドシンセと外部音源 その1

先日、ウィンドシンセと外部音源についてTwittじゃないやXでアンケートをとりました。ご協力いただいたみなさんに心よりお礼申し上げます。
結果については以下の通り。

https://x.com/spindrift64/status/1717087040955945022

大雑把にまとめると、「ウィンドシンセユーザーの約半数のかたが『外部音源』に興味があるものの、よくわからないので二の足を踏んでいる」と推測されます。

外部音源、よくわからないですよね。わたくしもわかりませんでした。いまも胸を張って「わかる」という勇気はありません。
そこで、自分がたどってきた道を振り返り、整理しながら書いていきたいと思います。なにかの参考になれば幸いです。

憧れのウィンドシンセを手に入れたぞ!
これで今日からウィンドシンセプレイヤーだ!

その日のことを覚えていますか。
自分の前には輝く未来が待っていると思えたはずです。

そしてある日、内蔵音源とはちょっと違う音を出したい、そんな瞬間があなたに訪れた。
そうではありませんか? いえいえ、別にあなたの心を読んだわけではありません。
大丈夫です。落ち着いてください。そんなふうに自分の演奏している音に物足りなくなるのは当たり前のことです。あなただけではありません。安心してください。

ということで、このページでは次の3大ポイントを強く意識して説明します。

1)外部音源をコントロールしやすいウィンドシンセ(高額)
2)比較的わかりやすい音源
3)財布にやさしい

詳しい方々におかれましては遠慮なく不備な点をご指摘いただき、わかりにい部分は個別にご質問いただければと思います。
それではよろしくお願いいたします。

ここでちょっと休憩しましょう。

いつもの雑感

いつだったかSNSで「あなたのウィンドシンセはどこから?」みたいなアンケートをとっていて、伊東たけしマイケル・ブレッカー(敬称略)がワンツーを決めていたのを覚えている。

日本で一番最初にウィンドシンセでヒット曲を出し、命を粗末にしているかのごとくツアーをたくさんこなした伊東たけし。そして、テクニックとアイディアの両方で誰も越えることのできない壁を築いた偉大なマイケル・ブレッカー。そろそろマイルス・パーカー・コルトレーンと並べるひとが出てきてもおかしくないんじゃない? まだ早い?
志半ばにして鬼籍に入ってしまったマイケル・ブレッカー。彼が向かおうとしていたかもしれない道なき道を切り開いていく者が現れるにはまだまだ時間がかかるだろうし。
一方、御年70を迎えたにも関わらず相変わらずの肉体派伊東たけし。このかたを見ていると、命はもともと無限だったなんじゃないかと勘違いする瞬間があある。
さて。
このおふたりには共通点があります。はい楽さん早かった。デヴィッド・サンボーン
いやまぁ確かに間違いじゃない。でもここで言いたいのは違うのよ。EWIなのよ。
どっちが先か、なんて論争はせずにいきましょう。ほぼ時同じくして世に現れたEVIとLyricon。たまさかバルブをタッチセンサーに置き換えたEVIではなく、saxを意識してデザインされたLyriconをトム・スコットが使っているのを見て「俺も俺も」と伊東たけしはLyriconを入手。日本のフュージョンが大きく変わるきっかけのひとつになったのは間違いないでしょう。
そしてマイケル・ブレッカーがLyriconを試してすぐにポイしたあと「俺も俺も」と開発に参加したのがスタイナーホーン(スタイナーEWI? 名前がいろいろあるからこの辺は専門家に任せましょう)のちのEWIですね。
で、伊東たけしも「俺も俺も」と秒でEWIを手にします。余談になりますがLyriconのようなシングルリードで音程をコントロールするのは大変に困難だったこともあり、類似製品がいくつも世に出ましたが、みなさんご存知のように当時のものは次々と消えていきました。で、で、リードを使わずに音程をコントロールできるEWIが一世を風靡します。ウィンドシンセのことをEWIと呼んで憚らないひとも多いですよね。そのちょっと前までは何でもかんでもLyriconと呼ばれていましたし(笑)。
その後のことは中高年のかたならご存知の通り。

これから日本のウィンドシンセはどうなっていくのでしょう。
いままで通りEWI的なものを中心に、かつてフュージョンと呼ばれていたものの完コピを至高とする古典派が主流であり続けるのか。あるいはEWIで旧フュージョンとは別のものを始めるのか。はたまたEWI以外のウィンドシンセが大舞台に登場し、新旧フュージョンあるいは別のなにかを作り出すのか。

楽しみでなりません。

キーカスタマイズ

ということで、インチキな英語を駆使してNuRADのピンキーキーをMWiCライクに変更するというカスタマイズ方法を公開しました。

個人的にはとても効果的なカスタマイズで、NuRADがこれまで以上に超プレイアブルになりました。アイデアの流用を黙認してくださった徳田教授には心から感謝いたします。

 

で、その後もあーでもないこーでもないとキーについて考えておりました。

要するにMWiCにパームキーがほしい。

ウィンドシンセは太古の昔からパームキーなしで発展してきました。WX5では左手人差し指で操作するHigh DキーとHigh D#キーの2つが登場しましたがいかんせんパームキーではない。Aerophoneのパームキーは手からあまりにも遠すぎる。

量販店の工具売り場やハンズをうろうろしてアイストラップはどうかなと試してみたけどいまいちしっくりこない。ひとつにはサイズと位置。

画面左側に飛び出た部分がアイストラップ。正面の丸いのはローゼットワッシャー。一番上のローゼットワッシャーはHigh D#の代わりにならんかなと試しにつけたものであります。MWiCの実物はまだ届いていないので32mm径のアルミパイプに養生テープで乱暴にペタ貼りしているのでアイストラップが上手く固定できず、ベストなサイズと位置がイメージできない。自分のせいですね。精進精進。

あと、アイストラップを固定したあとの強度も気になります。おそらく手のひらで(ベクトル斜めで)ぐいっと操作することになるだろうからしっかり補強しておかないと管体に影響が大きく出そうだし。

強度という点からは、WX5のHigh DキーとHigh D#キーは苦肉の策だったのかなと思ったりもしました。わたくしもロングキーを追加する方向で考えようかなぁ。

About NuRAD's PinkyKey modification

Thank you for finding my blog.
As a descendant of an old-fashioned ninja who is not an English speaker, I may write some unnatural sentences. I apologize in advance.
I am also an old man, and my personal characteristic is to talk too long. I apologize for that too.

NuRAD is unique in two respects: its historical background and its sophisticated design.
Many will also appreciate its charm as a complete musical instrument.
I would like to thank and give credit to Mr.Johan Berglund for developing NuRAD.

Now, due to personal circumstances, I am going to make a certain modification to this wonderful instrument.
To put it simply, I am going to make NuRAD's PinkyKey, which is thin toward the outside, thicker.
However, I do not have a 3D printer. So I decided to ask Professor Takashi Tokuda of Tokyo Institute of Technology in Japan to help me out.

Prof. Tokuda sells in Japan a state-of-the-art wind controller called MWiC, which he developed himself.
https://teefonics.jp/
It is a hybrid device that holds an EWI Key and uses an Alto sax mouthpiece.
I ordered MWiC and it will be delivered by the end of this year.
Those of you who are good observers of WindSynthesizer will recognize the image.
MWiC's PinkyKey is curved along the tube body (i.e., outward). This design was apparently based on the opinions of professional musicians and others. So I asked Pfor. Tokuda about it.
I asked Prof. Tokuda, "I want to customize NuRAD, so can you tell me how to make a PinkyKey?"
Prof. Tokuda was kind enough to explain in detail how to make it (even though he was talking about a competitor's product).
Excellent response. Thank you Prof Tokuda.
And we made a promise.
"Do not tell anyone other than MWiC users the make or model number of the component."

Therefore, to keep my promise to Prof. Tokuda, I will not specify the names of tools and parts in this article.
The names of tools and parts differ from country to country. And the standards for each may be different.
Therefore, I would like to ask you, the reader, to go to your favorite store, consult with the staff, and choose and buy what you think is best for you.

Let's cut to the chase.

First, I would like you to obtain five parts.
thumb screw(knurled screw?)
hex nut
Set Screw(Hex Socket Set Screw?)
vinyl tube
Low head screw

And by the way, if you find this, please give it a try.
Rosette Washer

Before we get started, a few words about each Screw.
I think it is OK to choose screws of the same thickness as those used for NuRAD's keys. In Japan, it is called M3, but I wonder if it is the same in your country.

Now, I would like you to refer to the following image for the working procedure.

 

Set Screw(Hex Socket Set Screw?)

hexagonal wrench...

Take a small screw.

Next is the vinyl tube.

hex nut

Put this in Set Screw(Hex Socket Set Screw?) you just put in.

Reverse-tighten the hex nuts to secure each one in place and keep it from moving.

Completion is near. Keep up the good work.

Ta-da! It's done!
Enjoy your wonderful NuRAD Life!

Once again, I would like to thank Johan Berglund of NuRAD and Prof. Takashi Tokuda of MWIC from the bottom of my heart.
Without their instruments, my old age would have been very boring.

Finally.
The rule of the Ninja is that if you are kind to someone, you should be kind to others.
We call this 恩送り "On-okuri".

 

Washer

Let me start this post by deciding that historical context is not very important.

If you have an EWI at hand, please look at the keys on the unit. If you don't have an EWI at hand, please search for an image. Oh, don't worry if you see someone with a wide forehead or green hair. He is a human being who has made great achievements in the wind synthesizer field in Japan, but let's forget about him for now. Now, I want you to pay attention to the keys held down by the left and right index, middle, and ring fingers. Officially, these are called note keys, and they are named K1 (skipping one), K3, K4, K7, K8, and K9, starting from the top (left hand), and moving to the right hand. The person who actually picked up the instrument now must have traced some kind of scale or phrase in his or her hands. It is a habit of the player, just like a pianist who puts both hands on the top board and starts to draw something when he gets on the table. Guitarists and bassists air-play when they grasp a train railing with their left hand, drummers when they hold chopsticks, cajon players when they sit on a chair, violinists when they hold a telephone between their face and neck, and horn players and oboe players when they go bald. It has always been so. Yukio Aoshima decided so in the Diet. That's the way it should be.

Now, the note key. The center of the key is round and indented. It looks like a butterfly shell on the key of a saxophone, for example. The design is as if to say, "You can put your finger here, right? And you will put your fingers there as if you are attracted to it. It is a very natural action. It is not too much to say that it is beautiful. The world is like that. Everything should be like this. You think so, too. I understand.

As a side note, Michael Brecker, the saxophone giant, played with his fingers outstretched, not with his right hand on the butterfly shell. I have never heard that he had longer fingers than others or that he had difficulty bending his joints, so he must have had some reason for doing so. I'll leave my silly speculation on that for another time.

Now, let's get back to the story, but instead of EWI, let's talk about NuRAD or NuEVI.

If you have a NuRAD or NuEVI at hand, please look at the keys on the unit. If you don't have a NuRAD or NuEVI at hand, please search for a picture. Oh, don't worry if you see a person with a wide forehead or green hair. He is a human being who has made a great achievement in the wind synthesizer area in Japan, but let's forget about him. You are free to remember him later. You are also free to become a follower. However, antagonism is not good. It is not for you to dwell on it. It is a loss to look down on people and make fun of them. Do you want to be a cockroach?

Um, so, the rounded indented keys that were on EWI do not exist there. Everything, including the screw heads that hold the keys in place, is flat, with just a few rounded pattern-like grooves; they don't employ rounded indented keys like EWI did. Why?

All living things in this world are bound by something. Even creatures that are surrounded by nature and nurture their lives far away from the human world. Take cockroaches, for example. They appear in front of us as if they want to be sprayed with insecticide. It must be an instinctive binding action to end their life span with insecticide. Good. Then war.

However, Mr. Johan, the designers of NuRAD and NuEVI, were different.

Keys don't have to be hollow, do they?

That's great. By designing without being bound by providence, he brought about the surprise and discovery that "if you touch something here, you can get the sound you are looking for. We were liberated.

Then there was a thunderbolt!


"Praise the Hollow God!"

 

 

Its name is Rosette Washer. I think you can find them at home improvement stores. Of course, Monotaro on Amazon has more varieties, but that might be just my imagination. There are also various sizes. I think NuRAD's screws are M3, but it might be my imagination, but M3 washers are too small. It is really small. It might be my imagination, but M3 washers are really small and might stick in my fingers. So I bought M4 washers. And I replaced the key of the main unit with a rosette washer ... . I also put a plastic washer in the raised bottom because it would be too hard to do it directly. The index finger has no plastic washer, the middle finger has one plastic washer, and the ring finger has two plastic washers.

Now let's take a look. Yes, ta-dah!

 

 

Hmmm. There is still a stinging feeling on my finger, but I think I'll get used to it. I may not get used to it, but I'll take my chances.

In fact, I was so frustrated when the green-haired guy in the photo showed off his work, saying, "I like it, don't you? If you are not an ordinary craftsman, it is like getting lost in a different world where you don't know how to read the size of parts or what the standards are. It was really hard work. So, someone please make a set and sell it soon. To reduce the number of victims like me. Somebody, please! Quickly.

 

Next is Pinky Keys!

ワッシャー

このポストは、歴史的な背景はあまり重要でないと決めつけるところから始めよう。

お手元にEWIがあるかたは本体のキーを見てほしい。手元にない向きは画像を検索してください。あ、おでこの広いひとや髪が緑のひとがでてきても気にしなくていいです。日本におけるウィンドシンセ界隈では大変な功績をお持ちのヒューマンなんですが、いったん忘れましょう。で、左右の人差し指・中指・薬指で抑えるキーに注目されたい。公式にはこれらをノート・キーと呼び、上(左手)から順にK1(ひとつとばして)K3、K4、右手に移ってK7、K8、K9という名前がついている。いま実際に手にしたひとは間違いなくパラララっとなんらかのスケールやフレーズをなぞったはずだ。ピアニストがテーブルについたときに両手を天板にのせてなにやら引き始めるのと同じ、演奏者の習性である。ギタリストやベーシストは電車の手すりを左手でつかんだ時に、ドラマーは箸を持った時に、カホンプレイヤーは椅子に座った時に、バイオリニストは顔と首の間に電話を挟んだ時に、ホルン奏者やオーボエ奏者は禿げた時に、エア演奏するものである。昔からそう決まっている。青島幸男が国会でそう決めたのだ。これでいいのだ。

さてそのノート・キー。真ん中が丸くくぼんでおりましょう。たとえばサキソホンのキーについている蝶貝のごとく、ここに指を置くんですよわかりますね? といわんばかりのデザインであります。そして吸い寄せられるようにそこに指を置いてしまう。実に自然な行動です。美しいと言っても過言ではない。世界とはそういうものです。すべてがこのようになっていることが望ましい。あなたもそう思うでしょう。わかります。

余談になりますが、かのサキソフォンジャイアント、マイケル・ブレッカーは右手を蝶貝に乗せず、指を伸ばしたまま演奏していました。彼がほかのひとに比べて指が長かったとか関節が曲がりにくかったなどという話は聞いたことがありませんので、なにか理由があってそうしていたに違いありません。それについてのわたくしの愚かな考察はまた別の機会に譲るとして。

さて話を戻しましょう、と見せかけてEWIではなくNuRADあるいはNuEVIの話をします。

お手元にNuRADもしくはNuEVIがあるかたは本体のキーを見てほしい。手元にない向きは画像を検索してください。あ、おでこの広いひとや髪が緑のひとがでてきても気にしなくていいです。日本におけるウィンドシンセ界隈では大変な功績をお持ちのヒューマンなんですが、いったん忘れましょう。あとで思い出すのは自由です。フォロワーとなるのも自由です。ただしアンチはよくない。そこにこだわるのはあなたのためにならない。人を見下したり馬鹿にすることは損です。あなたはゴキブリになりたいか。

ええと、それでですね、そこにはEWIにあったような丸くくぼんだキーは存在していません。キーを固定しているねじの頭を含むすべてがフラットになっていて、ほんのわずかに丸い模様のような溝があるだけです。EWIのように丸いくぼみのあるキーを採用してはいません。なぜか。

この世に生きとし生けるものはすべからくなにかに縛られています。大自然に囲まれ人間界とは遠く離れて命を育む生物であってもです。たとえばゴキブリ。やつらは殺虫剤をかけてくれと言わんばかりにわれわれの目の前に現れます。あれはきっと殺虫剤によって寿命を終えたいという本能に刻まれた縛りによる行動なのでしょう。よろしい。ならば戦争だ。

ところがNuRADとNuEVIの設計者であるわれらがヨハン氏は違った。

キー、くぼんでなくてもいいんじゃね?

素晴らしい。摂理に縛られることなくデザインすることで「なんかこの辺に触ってれば狙った音が出るぞ」という驚きと発見をもたらしたのです。われわれは解放されたのですエイメーン、ワッダマター。

するとそこに雷(いかづち)が!

 

「くぼみの神をたたえよ!」

 

その名はローゼットワッシャー。ホームセンターなんかにあるように思います。もちろんAmazonにもあるモノタロウのほうが種類多いかもだけど気のせいかも。サイズもいろいろある。んでそのサイズがなんとも切なくてですね、おそらくNuRADのねじはM3みたいな気がするんですけど気のせいかもしれないですけどM3のワッシャーだと小さい。本当に小さい。指に刺さりそう。なのでわたくしはM4を買ってきました。で、本体のキーをローゼットワッシャーと交換してみました.直でやるのもあれなので、プラのワッシャーも上げ底にいれてあります。人差し指はプラのワッシャーなし、中指はプラのワッシャー1個、薬指にはプラのワッシャー2個。

では見てみましょう。はい、ドン!

 

 

うーん。指への刺さり感はまだありますが、慣れそうな感じ。慣れないかもしれないけど、そん時はそん時で。

実はこれ、例の緑の髪のおかたに「いいだろホレホレ」と見せびらかされたのが悔しくて真似したという経緯でありまして。ふだん工作をやってないとパーツのサイズの見方とか規格とかなにがなんだかわからない異世界に迷い込んだようなものです。苦労したホント。だからどなたか早くセットにして売ってください。わたくしのような犠牲者をひとりでも少なくするために。だれか。はやく。

 

次はピンキーキーのココロだ!